神仏霊験譚の息吹き
―身代わり説話を中心に―
中前正志 著
四六判上製・340ページ 税込2,860円(本体2,600円+税)
ISBN978-4-653-04078-1【2011年8月刊】
涙を流す不動尊、女の髪を手に巻きつけた地蔵、矢を持った地蔵……一般的な像とは異なるこうした神仏の姿にはどのような由来があるのか。
「身代わり」をキーワードに、中古から近世、仏教から金光教まで幅広く神仏がその不思議な力によって信者を助ける霊験譚を集め、丁寧に資料を読み解くことで、ひとつひとつの霊験譚が時代を超え息づき蠢く、その鼓動を感じ取ることの出来る一冊。
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●第一章 不動の涙――崩れた霊験の証し
泣不動の二種類の涙/不動でない不動の涙1/不動でない不動の涙2/病悩苦痛の涙から感動哀憐の涙へ/霊験の証しが崩れたわけ/不動になった不動の涙
●第二章 命代わり――霊験を引き出したもの
住吉明神の除病譚/歌徳説話としての出発/身代わり説話への道/孝行恩愛説話への分岐/
前泣不動説話との交錯/ 「命にかはる」
●第三章 女の髪と地蔵――進化する霊験の証し
鬘掛地蔵の二種類の持ち物/娘の髪から母の鬘へ/鬘巻の地蔵から鬘掛の地蔵へ/ 山送りの地蔵から鬘巻地蔵へ/清水観音霊験譚との関係/現代異説横行事情
●第四章 髑髏の痛み――強調される霊験
澁澤龍彦『三つの髑髏』の「下敷」/後白河院の髑髏と三十三間堂/近世以降の拡がり/因幡堂の関与/霊験の強調/権威の付与
●第五章 折れる刀――霊験の一人歩き
日本ノモリヒサ/光とそのゆくえ/盛久と日蓮/「刀尋段段壊」の観音離れ/「刀尋段段壊」の一人歩き/中国霊験譚との関わり付刑場のマリア
●第六章 矢負から矢取へ――霊験の精神的背景
羅城門町の矢取地蔵/近世の矢負地蔵/空海と守敏の対立/接点としての矢と嫉妬/不合理性の解消/矢負から矢取へ
●第七章 封じられた秘術――霊験への期待と危惧
金光教の布教書『御道案内』/増幅するおかげ話/身代わりのおかげ話と住吉明神霊験譚/秘術「お持替」との接点/おかげに対する危惧/『御道案内』の葛藤と身代わりのおかげ話
●付 章 新生守敏――西寺所蔵守敏伝
西寺と守敏関係什物群/翻刻『守敏僧都一代行状縁起』『西寺開祖守敏大僧都略縁記』/近世偽作守敏伝/新生守敏登場/弘法大師伝の摂取/矢取地蔵という契機
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●著者:中前正志 なかまえ・まさし
京都女子大学文学部国文学科教授
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