中央ユーラシア環境史
窪田順平 監修 (総合地球環境学研究所准教授)
46判上製・各268〜427ページ
定価 税込3,080円(本体2,800円+税)
環境はいかに人間を変え、人間はいかに環境を変えたか
総合地球環境学研究所「イリプロジェクト」の研究成果を書籍化。
オアシス農業・遊牧の時代から、ロシア(ソ連)・清(中国)にはさまれて展開する近現代まで――氷河・沙漠・草原といった多様な環境と、そこに
生きる人々との関わりの歴史を、分野を越えた新たな視点から解き明かし、未来につながる智恵を探る。
【第1巻】 環境変動と人間 〈奈良間千之・編〉 ISBN 978-4-653-04191-7
環境の変遷が人々の営みに与えた影響とは?
●第1章 中央ユーラシアの古環境復元 ―アイスコア・湖底堆積物・年輪による復元―
天山山脈アイスコアからみる中央アジアの気候変動(竹内)/バルハシ湖の湖底堆積物からみる湖水位変動と環境変遷(遠藤・須貝・原口・千葉・中山)
●第2章 中央ユーラシアの人間活動の痕跡 ―遺跡と古文書が語る人々の営み―
ユーラシアにおける人間集団の移動と文化の伝播(林)/アラル海の歴史――考古学から見た気候と湖水位の変遷(ボロフカ、訳=窪田)
●第3章 中央ユーラシアの自然環境と人間 ―変動と適応の一千年史―(奈良間)
中央ユーラシアの湖面変動からみる環境変化/ 過去千年間の自然環境変動/ 過去千年間の自然環境変動史のなかの人間活動の痕跡
○ コラム
アイスコア掘削調査記(竹内)/ 樹木年輪の同位体分析からみる中央ユーラシアの気候変動(佐野)/過去千年間の植生復元――カザフスタン全域およびイリ河周辺地域におけるイネ科草本植物の分布域の変動(堀川・津山・石井)/過去千年間の氷河変動(坂井)/カザフスタンにおけるジュト(家畜大量死)――文献資料と気象データ(19世紀中葉―1920年代)(宇山)/イリ河の水収支(大西)
【第2巻】 国境の出現 〈承志・編〉 ISBN 978-4-653-04192-4
遊牧帝国ジューンガルの崩壊と露清支配
●第1章 帝国支配と国境の誕生
イリ地域をめぐる帝国の興亡と国境の誕生――ユーラシアの中心から辺境へ(杉山)/中央ユーラシアにおける「国境」の誕生と遊牧の実態(承志)
●第2章 小氷期と遊牧集団の移動・適応
十七世紀ユーラシアにおけるモンゴル遊牧集団――社会と環境(チョローン)/歴史の中のカザフの遊牧と移動(野田)
●第3章 農業大開発と移民社会の形成(華立)
清朝時代におけるイリ渓谷の農業開発/イリ九城点描――都市・住民・環境
○ コラム
遊牧国家の資源利用――ジューンガルにおける農業と交易(小沼)/ シベ集団の移住とその後の生活(承志)
【第3巻】 激動の近現代 〈渡邊三津子・編〉 ISBN978-4-653-04194-8
社会主義体制下の開発・環境破壊とその後
●第1章 中央ユーラシアの社会主義的近代化 ―カザフスタンとモンゴルの対比から―(小長谷・渡邊)
●第2章 社会主義体制下での開発政策とその理念 ―「近代化」の視角から―(地田)
●第3章 中央ユーラシア近現代の肖像 ―地域・集団・ひと―
「社会主義的近代化」の担い手たちがみた地域変容――イリ河中流域を対象として(渡邊)/中央アジアにおける灌漑農業(清水)/イリ河デルタの地域生態史――異化空間の生成と崩壊の記憶(阿部)/国境地域における社会主義崩壊とコミュニティ変容――中国・カザフスタン国境域を対象に(中村)
●第4章 開発と保全のバランスを求めて
中央ユーラシアの土壌と生産生態基盤(舟川)/乾燥・半乾燥地域の水資源開発と環境ガバナンス(大西・地田)
【第4巻】 生態・生業・民族の交響 〈応地利明・編〉 ISBN 978-4-653-04193-1
博覧強記を誇る著者が「西域」の生活の実体に迫る!
●T 中央ユーラシアの範域――構造論的措定
(一)ユーラシアの[中心―周辺]編成 /(二)中央ユーラシアと巨大海域周帯の同形性と異形性
(三)中央ユーラシアの範域画定
●U 三つの<生態―生業―民族>系
(一)生態=<気候―利水>系の空間布置 /(二)生業=<耕種―牧畜>系と民族分布の圏域編成
●V 耕種主業の空間――タクラマカン沙漠周縁のオアシス帯
(一)<超乾燥―扇状地―灌漑農耕―ウイグル族・漢族>の交響場 /(二)エスニック集団と耕種技術
(三)在来耕種技術と農具をめぐる東西交流 /(四)耕種技術と「沙漠の道」――西域北道・西域南道の役割相違
●W 農牧複合の空間――テンシャン山脈北斜面と北麓一帯
(一)移動牧畜システムの比較論――中央ユーラシア北半と西アジア
(二)農牧複合の成立――「高地草原」・「牧」・「農」の三者統合
●X 牧畜専業の空間――カザフ平原南部とテンシャン山脈高山域
(一)二つの牧畜専業――北方型と高地型 /(二)遊牧民と耕種――西アジアとの比較論
●Y <乾燥←→湿潤>スペクトラムと村落内土地利用
(一)土地利用構成要素の抽出・設定 /(二)準拠枠としてのマルトンヌ乾燥示数
(三)乾燥示数と村落内土地利用編成――気候変動への緩衝
●終章 「社会主義氷河」後氷期の風景――村落のペレストロイカ
(一)集団制から私有制へ――農用地と家畜の分配をめぐって
(二)社会主義的分業体制の崩落景――二〇〇九年・夏 /(三)訪問村落の後氷期――裂開するクレヴァス
【執筆者】
宇山智彦(うやま ともひこ) 北海道大学スラブ研究センター教授
地田徹朗(ちだ てつろう) 北海道大学スラブ研究センター学術研究員/ユーラシア研究所研究員
中村知子(なかむら ともこ) 東北大学東北アジア研究センター専門研究員
小沼孝博(おぬま たかひろ) 東北学院大学文学部講師
杉山清彦(すぎやま きよひこ) 東京大学大学院総合文化研究科准教授
須貝俊彦(すがい としひこ) 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
千葉 崇(ちば たかし) 東京大学大学院新領域創成科学研究科博士後期課程
野田 仁(のだ じん) 早稲田大学イスラーム地域研究機構専任講師
遠藤邦彦(えんどう くにひこ) 日本大学文理学部教授
中山裕則(なかやま やすのり) 日本大学文理学部教授
林 俊雄(はやし としお) 創価大学文学部教授
竹内 望(たけうち のぞむ) 千葉大学大学院理学研究科准教授
堀川真弘(ほりかわ まさひろ) 森林総合研究所特別研究員/(現)トヨタ自動車バイオ・緑化事業部主任
津山幾太郎(つやま いくたろう) 森林総合研究所特別研究員(PD)
坂井亜規子(さかい あきこ) 名古屋大学大学院環境学研究科助教
佐野雅規(さの まさき) 名古屋大学大学院環境学研究科・日本学術振興会特別研究員
大西健夫(おおにし たけお) 岐阜大学応用生物科学部助教
小長谷有紀(こながや ゆき) 国立民族学博物館教授
原口 強(はらぐち つよし) 大阪市立大学大学院理学研究科准教授
華 立 (か りつ) 大阪経済法科大学教養部教授
応地利明(おうじ としあき) 京都大学名誉教授
舟川晋也(ふなかわ しんや) 京都大学大学院農学研究科・地球環境学堂教授(兼任)
阿部健一(あべ けんいち) 総合地球環境学研究所教授
窪田順平(くぼた じゅんぺい) 総合地球環境学研究所准教授
承 志 (しょう し) 総合地球環境学研究所上級研究員
奈良間千之(ならま ちゆき) 総合地球環境学研究所プロジェクト研究員
渡邊三津子(わたなべ みつこ) 総合地球環境学研究所プロジェクト研究員
清水克之(しみず かつゆき) 鳥取大学農学部講師
石井義朗(いしい よしあき) 岡山大学大学院環境学研究科/(現)トヨタ自動車バイオ・緑化事業部技術員
サムピルデンデヴ・チョローン モンゴル国科学アカデミー歴史研究所所長
ニコラス・ボロフォカ ドイツ考古学研究所主任研究員
(※所属等は2012年3月現在の情報です)
【関連書】 ユーラシア農耕史 全5巻
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