京都大学蔵 潁原文庫選集 全10巻

≪2019年3月全巻完結≫ 【呈内容見本】

京都大学文学部国語学国文学研究室 編

A5判・上製・紙カバー装・平均500頁(翻刻・解題)
全10巻揃 162,000円+税
 ISBN978-4-653-04320-1(セット)

 京都大学蔵潁原文庫は、近世語研究を畢生の研究とし、近世文学研究を「言葉の科学」として大成した潁原退蔵博士が、自らの研究のために生涯にわたって収集し学んだ一大資料群で、博士の専門であった俳書をはじめ、江戸時代の多様なジャンルの版本・写本類が収蔵されている。
 本選集では、潁原文庫から従来未翻刻のもので学術的意義の高い稀覯書を厳選して翻刻、巻末に詳細な解題を付して刊行する。文学作品のみならず実用書や抄物の類も積極的に採録するほか、作品によっては影印や索引を添えて、研究の便を図った。近世文学・語学研究に役立つ好資料。

【各巻内容】
第1巻 好色本・遊女評判記・仮名草子・浄瑠璃   16,000円+税
第2巻 浮世草子  
16,200円+税
第3巻 連歌Ⅰ・俳諧Ⅰ  
15,000円+税
第4巻 連歌Ⅱ・俳諧Ⅱ・狂歌Ⅰ  
16,500円+税
第5巻 俳諧Ⅲ・狂歌Ⅱ  
14,800円+税
第6巻 談義本・読本・軍書  
15,000円+税
第7巻 戯作・漢籍Ⅰ  
17,500円+税
第8巻 辞書・抄物・漢籍Ⅱ
  18,000円+税
第9巻 雑書Ⅰ(大雑書・暦占・随筆Ⅰ)
  16,000円+税
第10巻 雑書Ⅱ(地誌・随筆Ⅱ)・総目録   17,000円+税

【潁原退蔵 えばら たいぞう 1894(M27).2.1-1948(S23).8.30】
長崎県生まれ。京都帝国大学文学部卒。文学博士。近世文学、とりわけ俳諧研究を中心とした実証的研究の基礎を築く。著書に『俳諧史の研究』(星野書店、1933年)、『江戸時代語の研究』(臼井書房、1947年)、『潁原退蔵著作集』全20巻別巻1(中央公論社、1979-84年)などがある。

【特色】
京都大学文学研究科図書館所蔵の潁原退蔵博士の旧蔵本から、従来未翻刻の近世文学研究に必須の稀覯書を中心に厳選。読みやすい「翻刻」の形で提供する。
近世文学研究を「言葉の科学」として大成した潁原博士の収集意図を重んじ、近世文学研究の周辺にある実用書や抄物の類も積極的に採録。注釈に至便。
漢籍類および挿絵を主体とする草双紙・絵本類にはすべて影印を付し、連歌・俳諧・抄物類の一部には研究に利便性のある索引を添える。
すべての作品に、最新の研究成果を生かした詳細な解題を記す。

【内容解説】
 近世文学の主要な作品は、翻刻や影印の形で続々と出版されてはいるが、実際の研究にあたっては、なお未翻刻なまま放置され、研究上の障害となっている作品が少なくない。また作品の読み解きにあたっては、一つの言葉の解釈に難渋し、様々な実用書や周辺資料をさぐってようやく一つの解釈にたどり着く経験をすることも多い。
 京都大学文学研究科図書館潁原文庫には、昭和二十三年に亡くなられた潁原退蔵博士の専門であった俳書をはじめ、江戸時代の様々なジャンルにわたる版本・写本類が多数収蔵されている。また、博士畢生の研究であった近世語研究のためのカード採録用に写された、著名なコレクターの蔵書の透写本やペン書きの写本も数多い。その意味で、潁原文庫におさめられた博士の旧蔵書は、資産家が財力にものを言わせて集めた善本・稀覯書のコレクションではなく、あくまでも近世文学研究のために一学者の集めた資料群なのである。 しかしそのような意図で集められた書物の中にも、今日の視点で見れば、いわゆる善本・稀覯書と評価されるものを少なからず見いだすことができる。本選集では、以上の点にかんがみ、潁原文庫の蔵書中から、従来未翻刻のもので、なお学術的意義の高い稀覯書を厳選し、「翻刻」の形であらたに本文を提供するものである。そのさい、潁原博士の収集意図を重んじ、いわゆる文学作品だけではなく、「言葉の科学」としての近世文学研究に役立つような作品もできるだけ選ぶこととした。作品によっては、影印がよりふさわしい場合は影印に代え、研究・読解の便宜をはかるため、連歌・俳諧の寄合語・付合語を検索するための索引も付した。すべての作品には、主に故日野龍夫教授の薫陶を受けた者による解題を添えた。[母利司朗・京都府立大学教授]

 

●●刊行の辞●●
京都大学名誉教授 濱田啓介

 潁原文庫は京都大学教授潁原退蔵博士の旧蔵書で、博士御逝去の後、京都大学文学部に寄贈された、我国近世刊本写本のコレクションで、現在京都大学文学研究科図書館に保管されている。潁原文庫目録に記載するところ、三七七八部六〇四〇冊に及ぶ。今般それより選編し「潁原文庫選集」として公刊するに至った事は、国文学史学界に大きな貢献を果たすものと信じられる。  
 潁原退蔵先生は明治二七年二月一日、長崎県南松浦郡北魚目村(中通島の北部、現南松浦郡新上五島町)に出生された。(父謙三は小学校訓導)。大正六年三月、東京高等師範学校国語漢文学卒業。七年九月京都帝国大学入学。一〇年三月京都帝国大学文学部卒業。同五月、京都帝国大学大学院入学。昭和三年三月、京都帝国大学大学院退学。同四月、京都帝国大学文学部講師を嘱託。昭和六年三月、京都帝国大学助教授に任ぜられる。同一一年四月、病気により依願免本官。保養のため激職を避けて居られたが、昭和二〇年三月、文学部講師として復帰。同二二年五月、授文学博士。同二三年八月、再び京都大学助教授に補せられた(文学部国語学国文学第一講座所属)。この助教授再任は、先生の病状が悪化し、臥床せられた事に鑑みての措置であった。同年八月三〇日御逝去。同日を以て、京都大学教授に補せられた。  
 潁原先生の御蔵書は、昭和二四年二五年に文学部において御遺族より購得したものが有り(六三四部一五一五冊)、その後昭和三一年より三三年にかけて、御遺孀潁原芳枝氏より多数蔵書の寄贈を受けて(三一四四部四五二五冊)、京都大学文学部保管の潁原文庫として成立した。なお附加が有って現在総計三七八三部六〇四六冊である。その総体は近世の刊本写本及び潁原先生(或は父君謙三氏)の手写された資料で、少数の明治初期刊本を含む。その領域は、先生の専門的御関心により、俳諧関係資料が大半を占めるが、それに止まらず、近世文学の全領域、雑書漢籍に及ぶ。  
 以来潁原文庫は公開されてきたところであるが、なお一層の利用に資するために、文庫中より学術的意義の高い文献を編選刊行することを、京都大学大学院文学研究科国語学国文学研究室において、かねてより企図していた。木田章義教授は、京都大学国文学専攻出身の諸氏の賛同を得て、二〇一四年六月、選書委員会を開催し、それは潁原文庫本刊行実現への第一歩となった。その後の会議においてその集名は「潁原文庫選集」と命名された。  
 以来編集の進行は大谷雅夫教授を中心になされ、翻刻解題の執筆は京都大学国文学専攻出身者、関係者が分担してこれを行い、造本製品化の実務は臨川書店がこれを担当した。  
 今茲、その第一巻が無事公刊せられ、我が国語学国文学研究室が学界への責務を果たすに及びし事は、まことに同慶に耐えないところである。今は来る亥歳に予定される完工成全を期して待つのみである。  
 潁原博士の直門野間光辰教授の遺弟たる老生は、その因みによって嘱せられて、ここに序文を表する次第である。

 

●●刊行にあたって●●
京都大学大学院文学研究科教授 大谷雅夫

 京都大学文書館蔵の潁原退蔵氏の日記およそ三十冊には、古書籍の購入・貸借・書写・校合等、書物に関わる記事が少なくないが、昭和十年(時に四十二歳)の日記に、「夢、旧家らしい田舎の家、そこで珍しい俳書をいろ/\と見出すのであつた。眼がさめても本の香が枕もとにして居るやうだつた」(四月二十八日)とあるのも、その例の一つに数えられるであろう。国文学の草創期、ことに近世文学においては、学問とはまずは自身が書物一切を集めることに他ならなかった。東京の古書店をともにまわった二人の若い友人、中村俊定・荻野清も「本の話になると夢中なので面白い」(一月十三日)。潁原氏宅を訪れた藤井乙男先生も「例の通り、古本を傍に積上げて話は中々尽きない。いつの間にか盃の数もいつもよりずつと多く傾けたらしい。先生も上機嫌であつた」(五月二十四日)。  
 潁原文庫は、俳書の山を夢にまで見、友人たちや老先生と書物への熱情を共にした一代の碩学が、生涯にわたって収集し、親しみ学んだ近世書籍の一淵叢である。  
 その宝の山から選りすぐりの善本を世に送り出すことを提案したのは臨川書店の故片岡英三氏。故島津忠夫、濱田啓介両先生を相談役に頼みつつ、選書・翻字・解題等の実務にあたる専門家諸氏を糾合したのは京都大学の木田章義氏。専門家諸氏を束ねて編集を推進したのは京都府立大学の母利司朗氏であった。

 

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