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選択される命 子どもの誕生をめぐる民俗
鈴木由利子著
A5判・上製・368頁
税込3,520円(本体3,200円+税) ISBN978-4-653-04399-7【2021年2月刊】
いのちは、どこからはじまるのか。医療技術の発達にともなって、胎児を含む子ども観はどのように変化してきたのか。民俗学の視点から、堕胎・間引き、中絶・避妊、水子供養などの事象を統計的に分析するとともに、その時代時代のさまざまな出産の現場を経験してきた産婆たちへの取材を通して、私たちの胎児観・生命観の変遷を追う。
<目次>
はじめに、序章
第一章 近代化以前の子どもの命の選択
第一節 記録された堕胎と間引き 1. 記紀神話にみるヒルコ 2.『今昔物語』に記された堕胎 3. 宣教師ルイス・フロイスが記述した堕胎・間引き 4.伊達政宗の消息に記された堕胎 ―宮城県村田町の文書― 5.『好色一代女』に記された堕胎児 6.『萬事覚書帳(全)―角田藤左衛門―』に記された堕胎・間引き 7.「日本九峰修行日記」に記された堕胎)
第二節 絵馬に描かれた堕胎と間引き 1. 徳満寺地蔵堂の間引き絵馬 ―民俗学者柳田国男が見た絵馬― 2. 関泉寺の「堕胎戒めの図」 3. 大雄寺の間引き絵馬 4. 恩徳寺の間引きの図
第二章 産児制限をめぐる制度と社会
第一節 明治時代――出産をめぐる制度の確立 1. 産婆をめぐる制度 2. 堕胎罪制定と産児制限運動の芽生え 3. 医学雑誌と新聞記事にみる産児の制限
第二節 大正時代――産児制限運動の展開 1. 産児制限運動の展開と世論 2. サンガー夫人の来日と産児制限運動
第三節 昭和時代――出産制限から妊娠抑制へ 1. 産児制限運動の全盛と消滅 2. 小説『河童』に描かれた産児制限 3. 戦後の産児制限 4. 産児制限から受胎調節へ 5. 受胎調節から家族計画へ
第三章 民俗学における堕胎・間引きと子ども観
第一節 民俗学における堕胎・間引き観 1. 従来の「堕胎•間引き」観 2. 民俗学における「子ども」 3. 子どもの魂
第二節 「間引き」の記録――新聞記事・統計資料・聞き書きから 1. 新聞記事に記された「間引き」 2. 統計にみる「命の選択」 3. 産婆・助産婦の聞き書きにみる「死産」
第四章 水子供養にみる胎児観の変遷
第一節 水子供養の先行研究
第二節 「水子供養」成立以前の胎児供養 1.近世の水子塚 2.胎児供養の始まり ―人工妊娠中絶と中絶胎児の供養―
第三節 水子供養の萌芽――清源寺「子育ていのちの地蔵尊」の事例 1. 中絶胎児供養への動向 2.地蔵尊建立と「いのちを大切にする運動」 3.「子育ていのちの地蔵」建立と水子の供養]
第四節 水子供養の成立 1.水子供養専門寺院の誕生 ―紫雲山地蔵寺― 2.地域に誕生した水子供養 ―宮城県の事例から― 3.水子地蔵尊像の鋳造
第五章 水子供養流行と社会
第一節 水子供養の背景 1.医療の進歩と胎児の可視化 2.水子供養を生んだ社会 3.メディアに現れた「水子」
第二節 法律と医学における「胎児」と「出生」 1. 法律にみる「胎児」と「出生」 2.医学にみる「胎児」と「出生」 3. 胎児をめぐる訴訟問題
第六章 水子供養の現在
第一節 仏教寺院総本山・大本山にみる水子供養
第二節 仏教寺院における水子供養の現在 1. 胎児供養の模索 2.水子地蔵霊場から地蔵霊場へ ―山形県庄内地方の事例-
終章、産婆・助産婦聞き書き資料、初出一覧、あとがき
●著者
鈴木由利子(すずき ゆりこ)
宮城学院女子大学非常勤講師。東北学院大学大学院文学研究科修士課程修了、修士(文学)。
専門:日本民俗学
〔主要論文〕「選択される命」「流産・死産をめぐる胎児観」『死生学のフィールド』石丸昌彦・山崎司編、共著、放送大学教育振興会、2018年。
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