金沢文庫資料全書 全10巻

≪2018年1月刊行≫ 【呈内容見本】
神奈川県立金沢文庫 編

B5判上製・函入・各巻平均330ページ ISBN978-4-653-04400-0(セット)
各税込30,800円(本体28,000円+税) 全10巻揃税込308,000円(本体280,000円+税)(分売可)


 鎌倉時代中期より南北朝時代にかけて金沢北条氏一門と称名寺の学僧が収集・学習した万余の典籍の中から、神奈川県立金沢文庫が厳選し、昭和49年から平成3年に総力を挙げて編集・発行した学術資料の復刻版。
 平成28年夏に国宝に指定された称名寺蔵・金沢文庫管理の聖教類を収録。仏教史・寺院史をはじめ日本中世文化の研究に長く寄与しながら、近年入手困難となっていた重要資料を限定復刊する。

【各巻収録内容】
第1巻 禅籍篇 達磨和尚観心破相論・明州大梅山常禅師語録・香厳頌・筠州黄檗山断際禅師伝心法要・禅苑清規・冶父川老金剛般若頌・正法眼蔵・坐禅儀・見性成仏論・成等正覚論 永安僧堂記・法門大綱(百丈禅師広説)・正法眼蔵打聞・禅宗法語
第2巻 華厳篇 華厳経義鈔・華厳経談玄決択・華厳文殊論・華厳論節要・香象清涼両師面受否抄・華厳信種義聞集記・華厳宗章疏並出題等目録也
第3巻 天台篇(一) 重編天台諸文類集・大乗止観法門・法華三昧行法・天台小止観・涅槃経疏三徳指帰
第4巻 浄土篇(一) 往生要集鈔故上人・浄土三部経大意・別異弘願性戒鈔・具三心義・極楽浄土宗義・弥陀本願義・選択集述疑・念仏助行要文抄・念仏往生伝・唐朝京師善導和尚類聚伝・漢家類聚往生伝・画西方浄土記
第5巻 戒律篇(一) 教誡儀鈔・結界唱相・結界法則・四分律注比丘尼戒本・十門口義・菩薩戒義記・律宗瓊鑑章
第6巻 真言篇(一) 真乗要文・御遺告秘要鈔・瑜祇経十二品大綱・瑜祇開心抄・五蔵曼陀羅和会釈・真言宗義精談集
第7巻 歌謡・声明篇 〔伽陀部〕・〔讃嘆・和讃部〕・〔声歌部〕・〔朗詠部〕・〔雑部〕
第8巻 歌謡・声明篇 続 〔伽陀部(続)〕・〔声明集部〕・〔讃部〕・〔三十二相・馬鳴調琴頌部〕・〔講式部〕・〔教化部〕・〔血脈部〕
第9巻 寺院指図篇 〔第Ⅰ類 灌頂  一 醍醐寺/ 二 勧修寺/ 三 仁和寺/ 四 東寺/ 五 大覚寺/ 六 泉涌寺灌頂堂/ 七 極楽寺/ 八 称名寺/ 九 遺身院(佐々目御坊)/ 一〇 無量寿寺/ 一一 その他〕 〔第Ⅱ類 修法  一 宮中真言院/ 二 神泉苑/ 三 東寺講堂/ 四 宮中昭陽舎/ 五 閑院/ 六 金剛勝院/ 七 某寺/ 八 称名寺/ 九 遍照心院/ 一〇 高野山/ 一一 仁和寺喜多院/ 一二 最勝光院/ 一三 某寺〕 〔第Ⅲ類 指図  一 高野山/ 二 仁和寺/ 三 某寺〕 〔第Ⅳ類 結界  一 称名寺/ 二 高野山/ 三 室生山〕 〔第Ⅴ類 その他  一 石清水八幡宮/ 二 庄園図/ 三 経庫図・輿図〕
第10巻 戒律篇(二) 四分律行事鈔見聞集

内容見本(PDF)

【本文見本 『正法眼蔵』 第一巻 禅籍篇 収録】

【本文見本 『結界唱相』 第五巻 戒律篇(一)収録】

【本文見本 『舎利讃嘆』 第七巻 歌謡・声明篇 収録】

【推薦のことば】

刊行に寄せて    第8代金沢文庫長 昭56~63在任 納冨常天

 金沢文庫に奉職したのは昭和30年4月1日で、課せられたのは聖教1万3千余冊(現在国宝)の整理と調査研究だった。聖教は700年余の伝世の間に虫・汚損しており、その保存状態が緊急だったので、31年度から修理事業を開始し、今日まで継続している。また調査研究においては、水野弘元・竹内理三・松下隆章先生などを学術顧問に迎えて指導を仰ぎ、その成果は随時『金沢文庫研究』などに発表した。また聖教の保存を考え、マイクロフィルム化するとともに写真本を作成し、さらには翻刻により、研究者による原本の閲覧や写真撮影を抑制し、また要望に応えた。とりわけ翻刻は金沢文庫の使命で『金沢文庫研究紀要』(全13号、臨川書店より復刻刊行)などに行ったが、事業として体系的に翻刻したのが『金沢文庫資料全書』である。当初は学術的に重要な資料から古書50巻、古文書10巻を順次継続的に刊行する予定だった。また発行部数も限られていたため、ひろく全国の研究者が利用できるよう、主要な文系の大学・研究所・図書館・博物館にしぼって配布せざるを得なかった。また当初の計画通りには行かず、禅籍・華厳・天台・浄土・真言・戒律・歌謡声明・寺院指図など10巻で打切りになり、非常に残念に思っていた。この度思いもかけず復刻出版されることになり、洵に大慶至極である。


資料全書の復刻に寄せて  第14代金沢文庫長 平14~18在任 高橋秀榮

 金沢文庫の古写本、古版本は仏教の基礎的研究に資するじつに有益なものである。今回、学界の要望に応えたいとの臨川書店の申し出により、『金沢文庫資料全書』全10巻が復刊されることになった。実によろこばしいことである。この全書出版を企画されたのは納冨常天先生で、発足当初は古書50巻、古文書10巻の予定であったが、オイルショックなどの影響もあり、10巻で休眠状態になった。金沢文庫の聖教と古文書は昨年夏、国宝の指定を受けたので、おのずからに『金沢文庫資料全書』の収録史料もすべて国宝としての価値を帯びることになった。このたびの復刻版が全国各地の図書館に配架されるにふさわしい理由も推察されよう。金沢文庫の鎌倉時代の古写本には崩し文字や異体字などが多く、特殊な字典を便りに翻字につとめたが、仏教学の泰斗や古写本に興味を抱く若手研究者の協力もあって、学術的価値の高い資料集を提供することができた。本文の翻字は原本通り、という方針であったので、異体活字を印刷工場の植工に沢山注文したり、収録資料の欠丁部分を補う断簡を最終校正後に発見して、印刷機を止めさせたこともあった。歌謡・声明、寺院指図の両巻が影印本の体裁なのは、声明の音符や密教修法の道場図などは活字翻刻が難しいと判断されたからであるが、斯界の研究者には信頼、活用してもらえたようである。ともあれ『金沢文庫資料全書』の復刻本を通覧していただき、多種多彩な日本仏教の写本資料から眼福を得ていただきたいものである。


 

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