吉津宜英著作集 全4巻 ≪2018年7月刊行開始!≫ 【呈内容見本】 東アジア仏教研究の新しい古典 南北朝隋唐時代の仏教、とりわけ華厳思想に関する研究において若くして画期的な論文を次々と発表し、注目された吉津宜英博士。生前博士自身が遺した著作の構想『慧遠教学の研究』を中心に、広く道元まで視野に入れた東アジア仏教全体の研究においてさまざまに有益な問題提起を行ってきた著作群を網羅的に収録する。 【各巻内容】
<編集委員> (50音順) <吉津宜英先生の略歴>
『吉津宜英著作集』を推薦する 東京大学名誉教授 木村清孝 故吉津宜英博士とは、私の方が少し年上で、出身地も学歴も違う。性格もかなり異なる。しかし、何か不思議な縁で結ばれていると感じる。というのは、はっきりしたことだけでも、同じ宗門に属すること、華厳思想の研究を中心的課題としたこと、鎌田茂雄先生等を通じて中国仏教の面白さや奥深さに目覚めたこと、後年には、平川彰先生が中心となって設立された仏教思想学会から学術賞を同じ年に受賞する栄に浴したことなど、共通点がいくつも挙げられるからである。博士の早逝を思うと、今も心が痛む。この度、その吉津博士の著作集が、学友と教え子の先生方によって編集され、刊行されるという。博士の研究としては、華厳関係のものがよく知られている。けれども、博士の関心は広く、中でも浄影寺慧遠と『大乗起信論』には早くから強い関心を寄せられ、さまざまな角度からその解明に取り組まれた。また、日本の道元に関しても、一家言を有しておられた。総じていえば、中国仏教ないし東アジア仏教の主要な山脈を辿る上で、きわめて有益な業績を挙げてこられたのである。本著作集を通じて、それらの業績を俯瞰しつつ精読できることは、仏教学の更なる発展のために、まことに喜ばしい。
『吉津宜英著作集』の刊行に寄せて 駒澤大学名誉教授 石井修道 吉津宜英博士と私の出会いは、不思議な仏縁の一言に尽きる。二人とも一九四三年の同じ年に曹洞宗の寺院の子弟に生まれ、駒澤大学禅学科に同時に入学以来、大学院も仏教学部への奉職も最後の七十歳の定年退職の年に至るまで、共に切磋琢磨してきた。痛恨の極みは彼の遷化のために残念ながら退職の日は同時に迎えることはできなかった。彼の主著は『華厳禅の思想史的研究』と『華厳一乗思想の研究』(共に大東出版社)である。今回の著作集が公刊できるに至ったのは、華厳学の大家で彼の指導教授の鎌田茂雄博士に縁のある研究者が献身的に力添えしていただいたおかげである。同時に、それができたのは、彼が研究仲間を暖かい抱擁力でもって育てあげた独特の人柄によるものである。 仏教文献学の研究は先賢の業績を無視しては成り立たない。吉津博士が積み上げて来た浄影寺慧遠や『大乗起信論』や華厳学などの研究業績を著作集として漏らさず参考にできるのは、研究継承者のこの上のない喜びであると同時に手近に学べる幸せである。ここに著作集を多くの研究者に推奨する次第である。 |