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リシンキング・ヒューマンズ 大西秀之著
<主要目次> ●著者 ※所属は2025年刊行時のものです
総合地球環境学研究所 所長 山極壽一 文化の研究が今面白い。自然科学の隆盛によって、これまで哲学が定義してきた人間の常識が大きく揺らいでいるからだ。自由意思や国民国家という西洋近代の思想によって作られた人間観や社会像が見直しを迫られている。本書はそれを、参与観察によって得られた民族誌を媒介にして、人間や人類社会を多角的な視野から相対化して語る野心的な試みである。まず、文化に対するこれまでの誤解を解き、文化が引き起こす様々な現象に目を向けた後、現代を牽引する科学的世界観と妖術などが支配する多元的な世界観を紹介する。そして、それらの世界観はどれも現実の社会に影響を与える「共約可能」なものと見なす。それを理解するためには、文化的能力として獲得される民俗的な生の知識が必要であると説く。現代の性をめぐるトラブルや社会的病、死生観、グローバル時代の国民国家の在り方、環境問題など、多くの課題の解決に「人間再考」という本書の示唆を傾聴したい。
同志社女子大学 現代社会学部 教授 大西秀之 人間や人類社会を理解するためには、なにが必要なのだろうか。なぜ自然科学による人間や人類社会の理解や説明だけでは不十分で、われわれは満足できないのだろうか。これらは、本書を貫く中心課題であり、筆者であるわたし自身が問い続けてきた命題である。その答えとして、本書では、科学的な理解や説明には還元しきれない、文化に基づく人間や人類社会の読み解きを試みる。文化は、自然環境や遺伝能力の制約から人間を解放し、個人のみならず人類全体が多様な生を営むための源泉にほかならない。またそれゆえ、通常われわれが自明視している人間観や社会像は、ほかにも選択しえていたはずの、多様な可能性の一つに過ぎないものとなる。このような背景の下、本書では、人間や人類社会のあり方を再考するなかから、文理という既知の枠組みに囚われない「人間科学」としての文化理解を模索する。 |