メディアの中のマンガ 新聞1コママンガの世界 茨木正治 著 ■四六判上製・250頁 税込2,530円(本体2,300円+税)(残部僅少) 発売中 ISBN 978-4-653-04011-8
情報が氾濫する現代において、新聞一コママンガ(=カートゥーン)が持つ意義とは? ――社会の世相を反映してきた政治漫画、特に郵政民営化で話題となった国政選挙を題材にした作品を多数取り上げ、一コマに凝縮された世界を一作品ごとに読み解いてゆく。また、中世ヨーロッパにおける風刺画から最近の日本の政治漫画にいたるまでの新聞漫画の歴史とカートゥーン研究史についても概観する。
●茨木正治(いばらぎ・まさはる)/東京情報大学総合情報学部准教授政治学博士 新聞漫画・記事の分析を、主な研究テーマとする。『「政治漫画」の政治分析』(芦書房・1997)
【目次】 I 章 序論 II 章 新聞漫画の歴史 III 章 カートゥーン研究の流れ IV
章 事例研究 ─第44回衆議院選挙における政治漫画の分析─ V 章 結論と課題
朝日新聞(朝刊)書評2007年09月23日掲載 一コマで訴えてくる影響力 [評者]小林良彰氏(慶應大学教授・政治学) 新聞が政治や世相を批判する際に、長い文章を連ねるより一コマの諷刺(ふうし)画を掲載する方が読者に訴えることがある。本書は、そうした政治漫画や、世相諷刺画(カートゥーン)の歴史や読者に与える影響を分析し、解説したものである。 そもそもカートゥーンは、中世末期の宗教改革で、教皇の悪事をパンフレットに描いて暴露することから始まったという。その後、新聞の普及に伴い読者層が一般庶民に広がるにつれて、難解な文章よりもわかりやすい諷刺画がもてはやされるようになった。 しかし、次第に漫画家の囲い込みなどで紙面がマンネリ化したり、世の中の出来事が複雑化するにつれて一コマ漫画では描ききれなくなったりし、勢いを失った。 わが国でも、明治以降、諷刺画などが新聞に多く掲載され、特に大正期には、当時の政治家たちを痛烈に皮肉ったが、二・二六事件以降は翼賛漫画に移行した。 こうしたカートゥーンは、読者に何が重要な争点であるのかを印象づけ、時には読者の政治的態度を変容させる効果をもつ。古今東西のカートゥーンを通してメディアと読者の関係を解明しようとする異色の意欲作である。
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