シネマとジェンダー ─
アメリカ映画の性と戦争─ 塚田幸光 著 ■四六判上製・274頁 税込3,080円(本体2,800円+税) 発売中 ISBN
978-4-653-06060-6
『レベッカ』から『真夜中のカーボーイ』、『羊たちの沈黙』まで ─第二次大戦やヴェトナム戦争、9・11期にいたる映画のなかの〈性〉は何を語るのか?
アメリカ映画における性表象と戦争/暴力との関係を軸に、映画が隠蔽/開示(イン・アウト)するアメリカの自画像を考察する。本書は映画学の入門書でありながら、アメリカ文化/映画におけるジェンダー論/社会学の入門書でもある。
【 目次
】 第0章 映画の性/政治学 9・11同時多発テロと映画『11'09"11
セプテンバー11』を比較し、「性」あるいは「身体」の表象とその裏にある戦争の影との関わりを考察し、同時に本書の視座・内容について概説する。
第1章 反転する視座 ジャンル、ジェンダー、『レベッカ』 [1940年代]
「女性映画」の視線のメカニズムは如何に機能し、ジャンルとジェンダーの主題に接続するのか。『レベッカ』に描かれる「家庭」の枠に嵌められる女性と、そのような性役割の構造から逸脱した女性の関係の物語を読み解く。
第2章 フレーミング・ジェンダー
戦争、メロドラマ、フィルム・ノワール [1940〜50年代] 繁栄する国家と反転するジェンダー。この奇妙な関係は、女が男を幽閉する『サンセット大通り』に顕著。ドラァグクイーンなど性規範から逸脱した女性表象にも言及する。 (『脱出』『殺人者』『サンセット大通り』等)
第3章 カウボーイ戦域/劇場(シアター)
ニューシネマ、ヴェトナム、『真夜中のカーボーイ』 [1960年代] ヴェトナム戦争とニューシネマの関係に主眼を置く。ゲイ・カウボーイが映し出す同時代アメリカを考察する。 (『真夜中のカーボーイ』『ワイルドバンチ』等)
第4章 両足のない「身体」
ランボー、ジョーカー、「犠牲者」ナラティヴ [1970〜80年代]
ポストヴェトナム期(レーガン期)の戦争映画とジェンダーとの関係を考察する。過剰なる肉体とはうらはらな脆弱な精神を持つ兵士に焦点を当てる。 (『ランボー』『フルメタル・ジャケット』等)
第5章 皮膚とジェンダー
『羊たちの沈黙』の性/政治学 [1990年代〜] ポスト湾岸戦争期の映画に見る性表象と、同時代の社会との関係について追究。皮膚とジェンダーをめぐる物語、異装/衣装とジェンダー(或いはトランス・ジェンダー)について言及する。 (『羊たちの沈黙』等)
●塚田幸光(つかだ・ゆきひろ)/関西学院大学法学部准教授
(2010年3月現在) |