藪内清著作集 全8巻
≪2023年11月全巻完結≫ 【呈内容見本】
『藪内清著作集』編集委員会 編
菊判上製・函入・各巻平均450ページ
全8巻揃 税込113,300円(本体103,000円+税)(分売可) ISBN978-4-653-04440-6(セット)
科学史の諸領域にわたり独自の史観を打ち立て、独創的な研究を生み出すと共に科学史を一つの
学問分野として確立した藪内清(1906-2000)。 単行本未収録の論文、入手困難な著作を中心に多岐にわたる氏の業績を編む。各巻解題・月報付。
【各巻内容】
第1巻 定本 中国の天文暦法 税込13,200円(本体12,000円+税)
第2巻 漢書律暦志の研究/隋唐暦法史の研究 税込14,300円(本体13,000円+税)
第3巻 天文学史T 税込13,200円(本体12,000円+税)
第4巻 天文学史U 税込14,300円(本体13,000円+税)
第5巻 科学史/技術史 税込14,300円(本体13,000円+税)
第6巻 自然科学史/数学史/医学史 税込15,400円(本体14,000円+税)
第7巻 欧 文 税込14,300円(本体13,000円+税)
第8巻 補遺/総索引 税込14,300円(本体13,000円+税)
<編集委員> (50音順)
新井晋司 同志社女子大学非常勤講師
川原秀城 東京大学名誉教授
武田時昌 京都大学人文科学研究所教授
橋本敬造 元関西大学教授
宮島一彦 元同志社大学教授
矢野道雄 京都産業大学名誉教授
山田慶兒 京都大学名誉教授、中国科学院名誉教授
<藪内清先生の略歴>
明治39年2月神戸市生まれ。京都帝国大学理学部宇宙物理学科卒業。京都大学人文科学研究所所長、同研究所附属東洋学文献センター長、京都大学評議員を併任。昭和44年、京都大学退職。同名誉教授。龍谷大学教授。昭和45年紫綬褒章および朝日賞、昭和47年ジョージ・サートン・メダル、昭和51年勲二等瑞宝章を
授与される。日本学士院会員。中国科学院自然科学史研究所名誉教授。平成12年6月逝去。享年94歳。
●●藪内清著作集の刊行に寄せて●●
山田慶兒
藪内清先生が逝去されてから17年になります。このたび臨川書店の御好意により、われわれ後学が渇望してやまなかった、『藪内清著作集』全7巻が出版され、先生の業績の全容に接する機会が得られますことは、たんに科学史の研究者にとどまらず、現代科学技術文明をその源流にまで遡って理解しようとする人びとにも、時宜を得た、貴重な贈物となるでありましょう。
いうまでもなく現代は科学技術文明の時代であり、とりわけ20世紀末葉以来の情報通信技術と生命科学の目くるめくような展開は、西洋ルネサンス以来の近代文明を終焉させ、人類史を新しい段階へと突入させました。しかし人類社会の未来像はまだ定かでなく、模索と混迷のさ中にあるように見えます。
ゴーギャンの晩年の絵に、「われわれはどこから来たのか、われわれは何者か、われわれはどこへ行くのか」と題する大作があります。ゴーギャンの問いは、今日われわれが
直面し、解決しなければならない問いである、と言っていいでしょう。
科学技術文明はどこから来たか。科学技術文明と言えるものが成立するのは、産業革命以後、19世紀になってからですが、その源流は宋元時代に高度の発展をとげた中国の科学技術にありました。そのことを明らかにしたのは1930年代以後、とりわけ第二次大戦以後における、中国科学技術史研究の発展でした。そしてこの研究分野を
開拓し、京都大学人文科学研究所において中国科学技術史の共同研究を主宰して、多くのすぐれた業績を生み出すとともに、若い研究者たちを育成されたのが、藪内清先
生でした。
科学は古代ギリシアの伝統を引く西洋人だけが生み出しえたという偏見を打破し、中国ひいては東アジアにおける科学技術の伝統とすぐれた達成を明らかにして、現代の文明観を一変させたのは、ケンブリッジのジョセフ・ニーダム博士と藪内清先生のお仕事でした。思想家としての風格をもつニーダム博士の研究は全人類史的視野において際立ち、藪内先生の研究は一字一句をゆるがせにしない古典学的手法によって卓越しています。藪内先生が師と仰ぎ、必ず「先生」をつけて呼んでおられたのは、天文学の新城新蔵、中国学の狩野直喜の両碩学だけですが、その学風が統合され、藪内先生の学問となって結実したのでした。
『藪内清著作集』は、藪内先生に親しく接してその薫陶を受けた研究者たちが、それぞれ一巻を担当し、編集・解説しています。そして現在も単行本として入手できる著作を
除けば、主要な著作・論文・エッセイがここに収録されています。
この著作集によって一人でも多くの読者が藪内先生の仕事に親しみ、科学技術文明への理解を深められることを期待しています。
●●藪内清著作集の出版を祝う●● 東京大学名誉教授・元日本科学史学会会長 伊東俊太郎
藪内清先生は、文字通り我が国における科学史研究の第一人者であられた。中国の天文学及び科学技術史の碩学として国際的にも著名で、科学史の国際賞サートン・メダルを受けた唯一の日本人研究者である。
その新書版の著作、『中国の科学文明』や『中国の数学』は、我々の間で広く愛読され、
そこから大きな学問的裨益を得た。しかし先生の著作は他にも多くの優れた専門書や論文があり、そのほとんどが今や入手困難である。この著作集では、それらが全面的に収録され、
世に出されることとなった。これは旱天の慈雨と云うべきもので、この科学史の大先達の業績の全貌を更めて知ることが可能となる今回の出版を心より祝賀し、江湖の読者に推薦する次第である。
●●藪内清著作集を広く勧める●● 京都大学名誉教授・元(社団法人)日本天文学会理事長 小暮智一
藪内清先生は私にとって敬愛する大先輩である。先生はまた、日本を代表する科学史研究者のひとりである。その研究は古代中国の暦法から始まって科学技術史全般に及び、さ
らにインド、ギリシャの天文学史や科学思想史など広い領域にわたっている。しかも研究書とともに一般の読者に向けた解説書も数多く執筆されている。
今回の著作集は藪内先生の全研究分野にわたり、専門書から解説書まで広く収録している。これは私のような科学史の門外漢にとっても有り難い企画である。いくつかの解説文を読み、次の段階へと進むことができるのも、こうした選集があって初めて可能となる。
この著作集は、科学史研究者は言うまでもなく、天文学の研究者や天文、科学に興味をもつ人にも、読み易く、奥行きの深い書物として得難いものであろう。私はこの著作集を幅広い読者に推薦したいと思う。 |