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儀礼と仏像
シリーズ実践仏教 Ⅲ
倉本尚徳著
四六判・上製・紙カバー装・帯付 336頁
税込3,520円(本体3,200円+税)【2022年8月刊】
ISBN978-4-653-04573-1
仏に見(まみ)えるために――仏と人が関係を取り結ぶ儀礼において、仏像は様々な役割を果たしてきた。懺悔、観仏、念仏、誓願……修行者の願望を託された仏像の役割を解説しながら、インドから中国へ、そして現代の日本へと伝わる仏教儀礼の歴史的展開と、その思想的意味を明らかにする。好評シリーズ、ついに完結!
<目次>
はしがき(編者)
序 章
第一章 仏像を主役とする年中行事――灌仏と行像
第一節 お釈迦さまの誕生日はいつか?
第二節 灌仏
第三節 行像――「仏を迎える」儀礼
第四節 二月八日の「城を巡る」行城儀礼
第五節 剣川県の太子会と行城儀礼
第六節 「進み行く像」としての行像
まとめ
第二章 身心をきよめる――大乗の懺悔儀礼と仏像
第一節 大乗の懺悔と布薩における懺悔
第二節 中国初期における懺悔の事例
第三節 東晋時代における大乗の懺悔儀礼の整備
第四節 南北朝時代の懺悔儀礼
第五節 『金光明経』――懺悔と誓願が織りなす金鼓の響き
第六節 『大方等陀羅尼経』――重罪を滅する懺悔の実践手引き
第七節 『涅槃経』――阿闍世王の懺悔
第八節 『大通方広経』の懺悔儀礼――三宝名号の称名礼拝による一闡提の懺悔
第九節 仏名と懺悔――七階仏名の成立過程
まとめ
第三章 仏・菩薩を憶念・観想する――念仏・観仏と仏像との関わり
第一節 『般舟三昧経』――阿弥陀仏の憶念と不臥不休の行道
第二節 観仏経典の出現――懺悔と仏像・禅観・称名・菩薩戒・浄土往生との結合
第四章 菩薩の誓願――仏前での誓い
第一節 菩薩の出発点としての誓願
第二節 誓願に生きる――『華厳経』浄行品
第三節 南岳慧思の『立誓願文』
第四節 阿弥陀仏となる誓願
おわりに/参考文献/図版典拠/索引
編者「はしがき」より
『シリーズ実践仏教』の最後を飾る冊として、倉本尚徳『儀礼と仏像』をここに公刊できることは編者の大きな喜びである。
著者の倉本尚徳氏は、中国の中世と呼ばれる南北朝隋唐時代に作られた石窟(せっくつ・石造りの寺)や石碑に刻まれた文字資料・画像ならびにそれらの拓本を読み解き、生(なま)の原資料から中国の仏教信仰の実態に迫る研究を精力的に進めておられる。
本シリーズは、第三冊『現世の活動と来世の往生』に、岸野亮示氏による律(りつ)に説かれる宗教活動──インドにおける「行像(ぎょうぞう)」」を公刊した。インドの様子を主に論ずる岸野稿に対して倉本稿は中国を主として日本にも説き及ぶ。両者に共通する関心は、漢語で「法会(ほうえ)」(仏教集会)や「斎会(さいえ)」(身心を清らかにして行う儀礼集会)と呼ばれる、広い意味での仏教儀礼である。両稿を合わせて読む時、インドから中国へ、そして現代の日本へという儀礼を中心とする仏教活動に流れる継承と展開の全体像に迫る知識を備えることができるに違いない。
倉本尚徳氏の本書第一章は「仏像を主役とする年中行事――灌仏と行像」と題し、岸野氏がインドに関して論じた「行像」の風習が中国にどのように伝わり、受け継がれたかを、具体的な文物資料に即して解説する。
第二章「身心をきよめる──大乗の懺悔儀礼と仏像」は、インドとの対比から視点を転じ、中国中世に特に重んじられた大乗仏教の菩薩としての実践徳目を論ずる。具体的には過去の過ちを告白し悔い改める「懺悔(ざんげ)」──キリスト教の一部で行われる懺悔(ざんげ)と仕方も内容も異なる──をすることの意味と、具体的な仕方、そして懺悔する際に仏像の前で行うことを詳しく論じ、その思想的な意味も解説する。
第三章「仏・菩薩を憶念・観想する──念仏・観仏と仏像との関わり」は、第二章に続き、やはり仏像が大切な役割を果たす実践法として観仏(ブッダを目の当たりにする瞑想体験)を取り上げ、経典に書かれた内容との繋がりを説く。
第二・第三章の内容をまとめる形で最後に第四章「菩薩の誓願──仏前での誓い」では、大乗仏教を実践する者として、まず菩薩として誓願を立て、この世の全ての衆生を救おうとする他者救済・利他行が肝心要の行いであることを主たる文献資料と実際に残る遺跡の両面から解き明かす。
本冊は、他の四冊と比べて参考文献が多く、また論述もかなり詳細にまで及ぶところが多い。これは仏教を実践するという実態を解説するには具体的な資料を明らかにしながら論述するのが最も適していると判断した倉本氏の見識の表れである。倉本氏の誠実さに裏付けられた詳しく具体的な解説としてお読みいただければ幸いである。
なお倉本氏と岸野氏のお二人の概説への橋渡しとして、第一冊『菩薩として生きる』にて、わたくしはお二人の論を読む助けとなりそうな補足事項を予め解説しておいた。具体的にどのようなことを書いたかというと、菩薩とはどのような修行者かと、経典を読む方法に「転読(てんどく)」と「梵唄(ぼんばい)」という二種の読み方があったことなどである。是非それらも繋げて本書の理解を深めていただければと思う。
詳しい解説の前にくどくどしい事柄を書くのは野暮というもの。「はしがき」はこのあたりにとどめ、詳しい論述を再読三読して実際にじっくり堪能していただきたい。
●著者
倉本尚徳(くらもと しょうとく) 京都大学人文科学研究所准教授。専門は六朝隋唐仏教史。主な著書に、『北朝仏教造像銘研究』(法藏館、2016)、『最澄・空海将来『三教不斉論』の研究』(共訳著、国書刊行会、2016)、『中国史書入門 現代語訳 北斉書』(共訳、勉誠出版、2021)など。
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