シリーズ 実践仏教 全5巻 ≪2022年8月全巻完結!≫ 【呈内容見本】 【各巻内容】 収録内容は変更の可能性があります
<執筆者一覧>(五十音順) 所属は2019年11月現在 【刊行の言葉】 船山 徹(京都大学人文科学研究所教授) 世界の様々な宗教には、心のあり方を重んずる宗教もあれば、体を動かすことをより重視する宗教もある。仏教は、過去の歴史と現在社会において、心の状態を重視しながら、その一方で教えを口で説き示し、体を動かして実践してみせることにも大きな意義を認めている。本シリーズは実生活や行為と仏教のつながりに目をあてる。仏教の概説書は、思想や教理という抽象的な側面から仏教を照らし出すことが多いだろうが、本シリーズはこれまであまり注目されてこなかった実践行為を取り扱う。 仏教の実践に着目する概説は実はこれまでもたくさんあった。しかし例えば「インド大乗仏教の瞑想実践」という概説があるとしよう。内容は実践と関係するに違いないだろうが、実際に中身を読んでみると、「具体的な実践」は取り上げず専ら「実践に関する理論」の説明に終始することがよくある。具体的な実践それ自体でなく、実践修行に関する抽象的理論を扱うだけの場合がままあるのだ。このような理論の枠組みに収まりきらないような具体的な事柄をもし主題とするなら、仏教の歴史や現状はどう説明できるだろうか。編者としてわたくしは、まさにこのような視点から『シリーズ実践仏教』を世に問いたい。 本シリーズの第一巻は、菩薩という大乗仏教の理想とする生き方を概説する。第二巻は、長い時間のなかで生きものは輪廻し何度も生まれ変わることの意味を取り上げる。第三巻は深い信仰から仏像や碑文を作る行為を具体的に説き明かす。第四巻は信仰とかかわる写経(経典の書写)の意義と、仏教の娯楽となった芸能や言葉遊びを紹介する。以上が前近代と関係するのに対し、第五巻は現代社会に息づく仏教を三章に分けて扱う。すなわち最初期から重視されつづけてきた瞑想法(精神統制)の今日的発展を扱う章、世界の仏教国の中で独自の価値を示し、注目されているブータン王国の仏教実践を解説する章、そして最後に、現代社会の避けられない課題として長寿のもたらす支援介護のあり方とターミナルケアにおいて仏教が果たす役割を紹介する章である。 本シリーズをきっかけに多くの読者が仏教の歴史と現代的課題に思いを寄せ、様々な形で現れた実践仏教について理解を深めるのに役立てて頂けるならば、編者として望外の喜びである。どの章も読者の目線を考えて分かり易くなるよう入念に執筆されているので、是非ご一読いただきたい。
【推薦文】 実践仏教という新たな視点 菅野博史(創価大学教授) 近年、『東アジア仏教の生活規則 梵網経』『六朝隋唐仏教展開史』『仏教の聖者』を矢継ぎ早に世に問われている船山徹教授が、新たに「実践仏教」全五巻を編集され、自らも第一巻『菩薩として生きる』を上梓される。氏は上記著作において、戒律を中心として、修行や信仰に鋭い目を向けてきた。もともとインドの仏教論理学を専門とされた氏は、中国仏教の分野を研究するに当たって、研究対象のバランスを取るかのように、仏教者の生活、実践に光を当てる研究を志してきたと思われる。中国仏教の教理を研究してきた私のような者にとっては、実践仏教という視点はとても重要であるとともに、自分にはなかなか手が出せない分野であるとも感じている。このたび、氏は研究仲間とともに、臨終行儀、儀礼、仏像、写経、仏画、芸能、そして現代社会における仏教の役割にまで視野を拡げた企画を立てられた。読書界の待望する企画であると思い、ここに推薦する。
仏教と〈実践〉 斎藤 明(国際仏教学大学院大学教授) いうまでもなく、宗教の本質は実践にある。宗教それぞれに特有の教理は、実践をとおして当事者の血となり肉ともなる。仏教もまた、この点で例外ではない。ただし、仏教において注目されるのは、理論(教理)と実践の距離が近く、実践が意味する範囲も広いことである。正しい見解から正しい心統一までの八正道や、それらをよりコンパクトにまとめた戒め・心統一・智慧という仏教徒が学ぶべき三つの課題(学処)もまた、仏教ならではの実践の奥ゆきを示している。実践上のモデルをブッダ自身に置いた大乗仏教にあっては、読誦や書写という形の心統一も重んじられ、すべての有情に対する親しみ(慈)や情け(悲)が強調される。本シリーズは、近年、インドから中国に至る仏教思想史研究の分野で多くの成果を公にしている船山徹教授の編集のもと、いずれも興味ぶかい五つの観点から、仏教におけるこのような実践の特色を分かりやすく抉りだしている。江湖の刮目に値するシリーズとして、心より推薦したい。
新たな試みへの期待 仏教に関する入門・概説書の多くは、思想・教学といった抽象的な内容を中心として、仏教の歴史を紹介する傾向にある。それゆえに、初学者の中には、仏教に対して、難解でどこか現実離れした印象を受ける者も少なくない。 本シリーズの特徴は、そのような抽象的な内容に終始せず、"実践"という新たな視座から、よりリアルな仏教の歴史を紹介する点にある。 約二千五百年続く仏教の歴史において、仏の教えを信奉する人々は、何を目的として、具体的にどのような宗教活動をなしてきたのか。本シリーズを通読することにより、読者の仏教に対する認識が大きく変化されることを期待し、ここに本シリーズを推薦する。 仏教タイムス 2020年3月12日号
|