山田美妙集 全12巻

≪2012年4月刊行開始≫

「山田美妙集」編集委員会 編 【呈内容見本】

A5判上製・平均500ページ
各巻本体予価7,600円+税
 ISBN978-4-653-04130-6(セット)

日本語表現の不屈の開拓者
文学一筋に生きた男の集大成


言文一致体小説の創始者として文学史に名を残す山田美妙だが、明治文壇の流行作家であるとともに新しい日本語表現の開拓者でもあった。小説、新体詩、評論、随筆など多くの作品を残した美妙の業績を網羅的に収録する初の著作集であり、草創期の近代文学研究に不可欠な資料。言文一致論や辞書編纂法など日本語研究関連著作を収めた巻は日本語学研究にも有用。各巻に解題を付す。

【各巻収録内容】 (予定) *は既刊 ( )は校訂解題担当者
1*小 説1・初期文集 (山田俊治・十重田裕一)/7,600円+税
 
 明治19〜22年頃の小説/『我楽多文庫』掲載の小説・韻文・雑文類
2*小説2 (山田有策)/6,800円+税
 
 明治22〜24年頃の小説
3*小説3 (須田千里)/6,800円+税
 
 明治24〜29年頃の小説
4*小説4 (関 肇)/7,000円+税
 
 明治28〜30年頃の小説
5*小説5 (中丸宣明)/7,500円+税
 
 明治30〜33年頃の小説
6*小説6 (谷川惠一・大橋崇行)/7,800円+税
 
 明治33〜35年頃の小説
7*小説7 (中川成美・福井辰彦)/9,800円+税
 
 明治35〜36年頃の小説

8*韻文・戯曲 (坪井秀人・宗像和重)/8,800円+税
 
 初期文集収録以外の全韻文・全戯曲        
9*日本語表現・評論・随筆1 (青木稔弥・宗像和重)/8,000円+税
 
 言文一致論、韻文論、辞書編纂法など日本語表現に関する評論類と
  明治21〜24年迄のその他評論・随筆・雑文類
10*評論・随筆2 (宗像和重)/8,800円+税
  明治25〜43年迄の評論、随筆、雑文類
11 自筆資料/書簡・宛書簡/日記
  自筆草稿の翻刻 美妙発書簡・宛書簡の翻刻 日記の翻刻
12 補遺/著作目録/自筆資料目録/年譜/収録作品名索引

《本著作集の特色》
●収録作品は「小説」、「初期文集」、「韻文」、「戯曲」、「日本語表現」、「評論・随筆」のジャンルに分類し、それぞれ初出による発表年順に編成した。
●各巻の冒頭にはその時期の代表作となる作品を置いた。
●底本には、原則として単行本初版を採用した。
●従来の選集や目録類から漏れた雑文類も可能な限り収めた。
●初めての翻刻を多く含む「書簡」、「宛書簡」、「日記」は、硯友社同人をはじめ、明治文壇の交友関係を知る重要な資料。

主な収録内容・略年譜・推薦文(PDF)

 

●●● 「山田美妙集」を推薦する ●●●

書斎は戦場なり ・・・・・・・・・・・・・・ 嵐山 光三郎

 山田美妙は二十歳(明治二十年)のときに小説『武蔵野』を「読売新聞」に発表し、言文一致の小説家としてデビューした。二十一歳のときに『夏木立』(短編集・金港堂)、二十二歳で『蝴蝶』(国民之友)、とつぎつぎに問題作を発表した小説家である。近代小説の文体は美妙によって始まったといってよい。
 しかし、私行上の問題を坪内逍遥に批判されて、以後は不遇な晩年をおくった。「少年名を成すは第一の不幸」で、当代の文壇先輩を乗りこえてトントン拍子に名声を博したため敵が多かった。余りに多才多能で、「我楽多文庫」の創刊にかかわった尾崎紅葉とも袂を分ち、ひとりぼっちになった。明治のはぐれ狼である。
 はぐれつつも、没する四十三歳まで、小説のほか詩・戯曲・評論・紀行など数多くの名作を書きつづけた。唱歌集・人名辞典・地名辞典・大辞典などの辞典編集でも先駆的業績を残している。
 美妙の執筆机の前の壁には「書斎は戦場なり」と書いた貼紙があった。明治の文壇より「消された」美妙の無念を思い、私は『美妙 書斎は戦場なり』(中央公論新社)を書いた。それと同じときに、『山田美妙集』(全十二巻)の刊行がはじまる。没後102年にして、美妙の小説・韻文・戯曲・評論・書簡・日記の全貌が明らかになる。すばらしい!
 美妙は、小説家と編集者を兼ねた、明治近代文学の混沌である。地を這うように執筆をつづけた美妙の執念を見よ。これぞ文学に殉職した人間の姿である。臨川書店は偉い!
 この全集が完結するのは2015年1月というから、私もそれを見届けるまであと三年は生きねばならない。泣くな美妙よ、貴兄がペン先に托した言霊の一文字一文字が、いまここによみがえる。 (作家)

泉下の美妙にも届けたい朗報 ・・・・・・ 木村 義之

 若くして流行作家の地位を獲得し、言文一致運動史に逍遙・四迷・紅葉らと並んで今なお燦然と名を連ねる山田美妙には、その仕事量に見合う規模の著作集が刊行されておらず、本文の分散には不便を感じていた。立命館出版部の『美妙選集』は種々の事情から選に漏れた作品も少なくない。また、山本正秀編『近代文体形成資料集成』にも美妙の重要な評論は収められているが、すでに絶版となって久しい。こうした美妙の扱いをかねて残念に思っていたところ、このたび大規模な『山田美妙集』が刊行されるとの朗報が届いた。
 日本語学の立場からすれば、日本語として遺された資料は当期の日本語を知るための立派な研究素材であり、作家の評価や文学的価値云々はひとまず問わないのがルールである。美妙の著作の数々は明治期の日本語研究の進展にも資するところ大であろう。もちろん、これまでも日本語学の分野では、美妙の言文一致論とその実践を近代口語文成立史の中に確たる位置づけを行ってきたし、東京アクセントを記述した『日本大辞書』にも近代国語辞書史上の画期的な試みとして評価を与えてきた。しかし、言文一致体小説としての価値は『浮雲』がリードし、辞書の完成度でも『言海』に及ばず、という世間の評価が定着していることもたしかで、総体的にはマイナス面に言及されることの多い美妙に対して、私はやや同情的であった。これには評価が高まらない種々の遠因もあるのかもしれないが、それでも私は異能の人としての山田美妙に人間的な興味を持ってしまう。かつて、早稲田大学図書館、本間久雄文庫に収められた美妙の自筆草稿を調べていたとき、反故紙と見紛うほどにびっしりと書き込まれた草稿の一葉に「睡魔」と墨書された落書きの二文字が今も鮮烈な記憶として残っている。夜を日に継いで言葉と格闘する美妙の姿を想像しつつ、伝え語られる小器用な作家といった美妙像とは異なる面を見出したように感じたからかもしれない。
 だから、没後百年を経て本格的著作集が刊行開始となることを、真っ先に泉下の美妙に伝えたい気がする。 (慶應義塾大学教授)


もたらされる恩恵 ・・・・・・・・・・・・・・ 境田 稔信

 山田美妙は文学者として有名であるが、国語学者でもあった。言文一致や句読点類の使用といった日本語表現の変革期に直面し、数々の持論を発表・実践している。また、辞典の編纂も手がけ、『日本大辞書』『日本地名全辞書』『万国人名辞書』『帝国以呂波節用大全』『漢語古諺熟語大辞林』『新編漢語辞林』『大辞典』などを出版した。たとえば『日本大辞書』を見ると、句点と読点の中間的な「白ゴマ点」を使っていたり、疑問符・感嘆符を古典の引用文にまで加えることをしている。日本で初めてアクセントを表示した辞典であり、口述速記によって原稿が作られ、口語体の語釈も初めてだったから、かなり革新的である。しかし、文学以外の活躍について詳しく書かれたものは珍しく、一般にはあまり知られていない現状にある。美妙の全容を知るためには原資料を一つ一つ探し出す必要があり、一部の専門家を除いて縁遠いものになっている。それがこの『山田美妙集』において、小説類のみならず、評論・随筆・書簡・日記等にいたるまで、まとまった形で収録されるという。刊行された暁には、おおいに美妙への理解が深まることだろう。どんな研究においても原典を確認することは欠かせないものだが、まずは『山田美妙集』があれば、容易に全体像を把握することができるのである。研究者にはもちろんのこと、近代文学に興味をいだく一般読者にも、基本的な文献として多大な恩恵をもたらすのは間違いない。 (日本エディタースクール講師)

真の美妙復権に向けての果敢な試み ・・・ 中島 国彦

 山田美妙は「です」、二葉亭四迷は「だ」、尾崎紅葉は「である」――このようなことを、高校三年の時、耳にした。言文一致文体の創出に関係する知識だが、それが美妙の名を知った最初である。戦前初刊の岩波文庫は絶版、昔出ていた『美妙選集』二冊は古書価が高く、図書館で見るしかない。その後、講談社版『日本現代文学全集』、筑摩書房版『明治文学全集』などの「山田美妙集」で、主要作品を読むことが出来た。『武蔵野』『蝴蝶』などの有名な初期作品は比較的読みやすかったが、文学史的に重要な文学者であることはわかっていても、その他の作品を眼にする機会が少ないため、位置取りがなかなか定まらなかった。文才は理解出来ても、文末の「です」には、ゆるみがあり、句点の後の一字開けも、どうしても親しめない。美妙にとっても、そうした外面は損ではないか、と思った。
 美妙復権の動きが出て来て、嵐山光三郎・山田篤朗氏の著書も出た。筑摩書房の『明治の文学 山田美妙』も、うれしい一冊だった。が、復権が外的なものでないためには、言葉の内実、その文学性に向けての検証が欠かせない。その第一歩が、2010年秋に日本近代文学館で開催された「草創期のメディアに生きて 山田美妙没後100年」展であった。テキストの整備が進めば、真の復権が必ず実現する――三か所に分散されていた資料が一堂に会すというドラマに立会い、十川信介氏を中心とした編集委員の努力を目の当たりにし、そう確信した。十川氏が新しい岩波文庫を編み、『いちご姫』も簡単に読めるようになった。批判を受けながら「です」にこだわった美妙の、文体・語りの構造や人物像のエネルギーにも、新しい証明が当てられた。雑誌「文学」の新しい特集も、刺激に満ちている。深い知見を持つ多くの編者に恵まれている今こそ、美妙復権への好機に違いない。先ず美妙を虚心に読むこと――それを実現させてくれるこの企画が、近代文学研究全体をも充実させてくれることを、本当に幸福に思う。 (早稲田大学教授)

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