ヒンドゥークシュ南北 ≪2024年10月全巻完結!≫ 【呈内容見本】 ヒンドゥークシュ山脈南北地方、そこは大文明の地ではない。しかし、ここを押さえる政治勢力は、中央アジアばかりか東アジアまで及び、歴史の経過は大きく影響を被った。この地域は、アジアの歴史の鍵鑰である―考古学調査と文献精読の成果(すべて未単行の論考)を結集し、全4巻に編む。 【各巻内容】 <桑山正進先生の略歴> 京大考古学の水野清一の学生として1960年代アフガニスタンでの発掘で始まった桑山正進先生の研究は、ガンダーラからヒンドゥークシュの南北の遺跡の発掘の現場に軸足を置きながら、文献史料、とりわけ玄奘を初めとする求法僧の記録類を博捜して、遺跡の年代や歴史地理学的な意義を論じることを特徴としている。文字通り他の追随を許さない成果をあげてこられたが、バーミヤーンの仏教遺跡に関する一連の研究はその精髄である。1990年代に入って内戦のアフガニスタンから、大量のバクトリア語文書、ガンダーラ語及び梵語仏典が現れ、出土貨幣も含めてこの地域に関する研究が脚光をあびるようになると、英語でも発信して来られた先生の研究は世界的に注目されるところとなった。この地の歴史や商路についての先生の考え方の有効性が新出資料から確認されたのである。その意味で先生の研究はそれ以前と一線を画す分水嶺であり、現在の研究の確固たる出発点として必読の論考になっている。ただ惜しむらくはいろいろな雑誌や論文集に発表されていて、入手が難しいものもある。このたび欧文も含め先生のこれらの論考が、一括して刊行されることは、日本のみならず世界の学界にとって福音である。 仏教考古学者、中央アジア・南アジア古代史家としての桑山正進先生の令名は、日本よりむしろ海外に鳴り響いていると言ってよい。古代〜中世の中央アジア、北インドの歴史・考古・美術を学ぶ研究者で桑山先生の論文を読んだことがない、という人にはあまり会ったことがない。豊富な発掘調査経験と、人文研東方部という環境の中で蓄えられた幅広い漢籍に関する知見を兼ね備えた研究者は空前の存在だからだろう。先生が人文研を定年退職される際に刊行された英文論集Across the Hindukush of the First Millenniumは、非売品だったせいもあり、世界中の研究者から、どうすれば入手できるのかという問い合わせが後を絶たなかった。このたび、半世紀以上におよぶ桑山先生のお仕事がひとつにまとめられ、かつupdateされた上記英文版もあわせて刊行されるのは、それゆえ国内外の研究者にとってこの上ない朗報である。ただ、できれば専門家以外の方にも読んでいただきたいと願う。優れた歴史家というのがどのような方法で過去と向き合い、歴史を描き出してきたのか、その見事な実例がここにあるからだ。 |